第百三十章

葵は上座に腰を下ろした。萩森佑喜は黒い仁王像のように、一歩も離れず彼女の背後に立ちはだかっている。

「ジェームズさん、買収の話をしに来たのなら、黙って帰ってちょうだい」

葵は顔も上げず、自身のノートパソコンを開いた。

「ノーノーノー、水原さん。誤解していますよ」

ジェームズは肩をすくめ、モニターの株価チャートを指差した。

「我々の現在のターゲットは藤原グループではありません。あなたが握っているNexusラボです。量子チップのコアコードさえ引き渡してくれれば、我々黒岩ファンドは即座に百億ドルを注入し、藤原グループの株価を回復させてあげますよ」

会議室に集まった藤原家の分家筋が、次々...

ログインして続きを読む